「この商品はTOPヤーンでできています」
「この商品の撚り杢が1つ1つの個性の表情豊かで。。。」
などの言葉をアパレル業界だとたまに耳にします。
TOPと撚り杢の差について記載します。
TOPとは
綿・原毛の時に染めて作った糸の事です。
綿・原毛の時に染めてから、カード(毛を均一に向きをそろえる)掛けて、
糸を単糸で撚り、双糸に撚るという工程です。
全体的に均一な色がでますが、
原毛の染まり具合によっては色々な色の繊維が混ざりこんで3~4色が混ざっている様な
複雑で深いきれいな色合いが出ます。
スウェットのライトグレーなどはよく見ると
白、薄い灰色、中間の灰色、濃い灰色が混ざりこんだ色をしているものがあります。
こういうスウェットもTOPヤーンで出来ています。
糸染のロット(1色につきの生産量)が大体1トンとしたら、
原毛染め(綿染め)の場合は5~10倍かかることもあり
糸商社と呼ばれる会社がその原毛を売るのを担います。
そのため、糸商社といわれる会社があるとも言えます。
撚り杢糸
糸を撚る際に最初の糸をA色、2本目の糸をB色にして撚った糸。
撚り杢糸はAとBの色が離れていれば離れているほど注意が必要で
1)編立した時に格子が出る事がある
格子とは、絣糸などにも起こる模様の現象で
何も細工していないのにチェック柄の様な模様や
アーガイルの様な模様が出てしまう事があります。
2)脇の柄色合わせが合わない事がある
上記の模様の現象と同様で、前身頃と後ろ身頃の色が合わなくなったり、
袖の左右の色が合わなくなる。これは避けにくい現象なので
そういうものである事を了承してもらうか
糸調整してなるべく差のない色に抑えるようにしたり
A色とB色の差を少なくして色がなじむ様に最初から指示したりします
撚り杢糸に似ているけれど裏技として・・・
「気になる糸と違う糸同士を引き揃える」という技もあります。
こちらは糸同士を合わせて編むというテクニックなので撚っていません。
ただ、糸とゲージの計算は撚り杢糸作成と同じ計算方法になります。
こちらの糸は「作っていないのにオリジナル感」を出せる簡単な技です。
こちらの点で注意は
1)引っ掛かりやすい
糸がまとまっていないので、引っ掛かると片方の糸だけ飛び出したり
片方の糸だけ切れてしまったりした場合、傷が目立つという点があります
2)格子は出る
撚り杢糸の注意点と同じです
どちらが良いという事ではないといいたいですが、
いや~実際、現実問題、「TOPのが高級」という認識で良いと思います。
TOPはストックヤーン(糸商社がKEEPしている糸)を選ぶ事で対応できますが、
「TOPのオリジナルを作りたい」という依頼はほぼお断りされます。
すべての糸を1年で消化できるのであれば依頼可能です。
撚り杢糸は大量な発注ならやってくれる事も多いです。
「このAの糸とこちらのBの糸を撚って糸を作ってほしい」という依頼は
まあ・・・なかなかないですが
たまに気を利かせてニットデザイナーの立場から依頼する事はあります。
引き揃えは結構やります。
「この糸のこの色を使いたいけれどフワフワさせたい」などの依頼の時に
ご希望の糸とタム糸(フワフワの糸)を引き揃えるテクニックを使ったり、
「フワフワの糸を使いたいが、内側はフワフワしてほしくない」
という場合はタム糸の裏に綿糸を引き揃えたりします。
どちらも、同色で行わないと表にひっくり返る(裏側糸が表側に来てしまう)のと、
番手を合わせたり度目を調整しないときれいに出来ないので注意が必要です。
糸の状態がわかっていれば、色々な事が出来るのもニットの良いところです。
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